コンサートやバードウォッチングで活躍する双眼鏡ですが、いざ使ってみると「双眼鏡で両目で見れない」と感じた経験はありませんか。
片目だけぼやけるのはなぜだろう?視野の一部が黒くなる黒い影は何が原因だろう?と悩む方は少なくありません。
また、まつげが邪魔になったり、メガネをかけたままではうまく見えなかったり、そもそも正しい目に付ける位置が分からなかったりと、悩みは様々です。
しかし、これらの問題の多くは、双眼鏡の正しい設定や調整で解決できる場合がほとんどです。
この記事では、双眼鏡が両目で見れない原因から、誰でも簡単にできる正しい調整方法までを分かりやすく解説します。
双眼鏡で両目で見れない|主な原因とチェック項目

- 片目だけぼやけるのはなぜ?視度調整が原因かも
- 視野が黒くなる黒い影は「目幅のズレ」が原因
- まつげが邪魔に感じる時のアイカップ調整法
- メガネをかけたまま使う時の見え方とコツ
- 双眼鏡を目に付ける正しい位置と構え方
片目だけぼやけるのはなぜ?視度調整が原因かも

双眼鏡を覗いた際に、片方の目ははっきり見えるのにもう片方の目がぼやけてしまうのは、左右の視力差が調整されていないことが主な原因と考えられます。
多くの人は左右で視力が異なるため、中央のピントリングを回すだけでは、どちらか一方の目にしか完璧にピントが合わない状態になります。
この左右の視力のズレを補正するのが「視度調整」という機能です。
この調整を行わないまま使用を続けると、片目だけがぼやけるだけでなく、脳が無理にピントを合わせようとするため、目が非常に疲れやすくなったり、不快感の原因になったりします。
したがって、双眼鏡を快適に使うためには、使用前に必ずこの視度調整を行うことが大切です。
具体的な調整方法は後の見出しで詳しく解説しますが、まずは「片目のぼやけは視力差が原因」という点を理解しておくことが、問題解決の第一歩となります。
視野が黒くなる黒い影は「目幅のズレ」が原因

双眼鏡を覗いたときに視野の周りが黒くなったり、黒い影が見えたりする現象は「ケラレ」と呼ばれ、その多くは目幅(両目の瞳の間隔)と双眼鏡のレンズの間隔が合っていないことに起因します。
双眼鏡は、左右それぞれのレンズが捉えた映像を脳で一つに合成することで、立体感のある視界を得る仕組みです。
このとき、双眼鏡の接眼レンズの間隔がご自身の瞳の間隔と正確に一致していないと、左右の映像がきれいな一つの円として重なりません。
結果として、視野の周辺部分が黒く欠けてしまい、窮屈で見えにくい視界になってしまいます。
これは、両目で正しく覗けていない状態であり、長時間の使用では目の疲れを引き起こす一因ともなります。
この問題を解決するには、双眼鏡本体の中央部分で折り曲げたり広げたりして、レンズの幅をご自身の目の幅に合わせる「目幅調整」が必要です。
調整が正しく行われると、黒い影は消え、快適で広い一つの円形の視界が広がります。
まつげが邪魔に感じる時のアイカップ調整法

双眼鏡の使用中に、まつげがレンズに当たってしまい、視界が遮られたりレンズが汚れたりして邪魔に感じることがあります。
この問題の主な原因は、目と接眼レンズの間の距離が適切でないことです。
この距離を正しく保つ役割を担っているのが「アイカップ(目当て)」と呼ばれるパーツになります。
アイカップは、多くの場合、回転させて伸縮させるタイプ(ターンスライド式、ポップアップ式)か、ゴムを折り返すタイプがあります。
裸眼・コンタクトレンズの場合
裸眼やコンタクトレンズで見る際は、アイカップを伸ばした(引き出した)状態で使用するのが基本です。
こうすることで、目とレンズの間に最適な距離が生まれ、まつげがレンズに触れるのを防ぎ、視野全体を快適に見渡すことができます。
メガネの場合
前述の通り、メガネをかけて使用する際は、アイカップを縮めた(収納した)状態で使います。
メガネのレンズの厚みで既に目とレンズの距離が確保されているため、アイカップを伸ばすと逆に目が離れすぎてしまい、視野が狭くなる原因となります。
このように、ご自身の状況に合わせてアイカップを正しく調整するだけで、まつげが当たる不快感を解消することが可能です。
メガネをかけたまま使う時の見え方とコツ

メガネをかけたまま双眼鏡を使用すると、視界が狭く感じたり、周辺が暗く見えたりすることがあります。
これは、メガネのレンズの分だけ目と双眼鏡の接眼レンズとの距離が離れてしまうために起こる現象です。
この問題を解決し、快適な視界を得るためには、いくつかのコツがあります。
まず最も基本的な点は、アイカップを必ず縮めた(収納した)状態で使用することです。
これにより、少しでも目に接眼レンズを近づけることができ、視野のケラレを軽減できます。
ただ、これだけで完全には解決しない場合も少なくありません。
そこで重要になるのが「アイレリーフ」というスペックです。
アイレリーフとは、視野全体がケラレなく見える、目と接眼レンズの最大距離を示す数値です。
メガネを使用する方は、このアイレリーフが15mm以上あるモデルを選ぶことをお勧めします。


アイレリーフが長い双眼鏡は、目がレンズから少し離れても視野全体をしっかりと見渡せるように設計されているため、メガネ使用者でも快適な観察が可能になります。
ただし、メガネのフレーム形状やレンズの厚みによっては、ハイアイポイント設計のモデルでも多少のケラレが生じる可能性はあります。
双眼鏡を目に付ける正しい位置と構え方
双眼鏡の性能を最大限に引き出すためには、正しい位置に目を当て、安定した姿勢で構えることが不可欠です。
見え方が安定しない原因が、単純に構え方にあることも少なくありません。
ここでは、基本的な2つのポイントに分けて解説します。
目に押し付けず適切な距離を保つ
双眼鏡を目に強く押し付けるのは避けましょう。
目に押し付けると、まつげでレンズが汚れる原因になるほか、眼球が圧迫されてかえって見えにくくなることがあります。
前述のアイカップ調整を行った上で、軽く目に当てるか、わずかに隙間をあけるようなイメージで覗くのが適切な位置です。
手ブレを防ぐ安定した構え方の基本
手ブレは、特に高倍率になるほど視界の揺れとして大きく影響します。
この手ブレを最小限に抑えるには、安定した構え方が鍵となります。
まず、両手で双眼鏡の本体をしっかりと持ち、脇を固く締めるのが基本の姿勢です。
肘を横に張ってしまうと腕が不安定になり、ブレが大きくなるので注意しましょう。
また、ピントを合わせる中央のリングは、人差し指で自然に操作できる位置で双眼鏡を握ります。
片手で持ったり、指先でつまむように持ったりすると安定せず、クリアな視-界を得るのは難しくなります。
これらの点を意識するだけで、見え方は大きく改善されるはずです。
双眼鏡が両目で見れないを解決!正しい調整手順

- 【必須】最初に自分の目幅に合わせる方法
- 各社共通!ビクセンの説明に学ぶピント合わせの基本
- 左右の視力差を補正する「視度調整」のコツ
- 調整してもピントが合わない!見えなくなったのは故障?
ここからの調整手順の流れは、動画でもご確認いただけます。
解説は前述のアイカップの調整から始まりますので、操作のイメージを掴みたい方は、ぜひご活用ください。
この先のテキストとあわせて見ていただくと、一層理解が深まります。
(動画で使用されている双眼鏡は”ビクセン ATERA ⅡH12×30 防振双眼鏡 ”です。)
【必須】最初に自分の目幅に合わせる方法
双眼鏡で両目を使って快適に見るための、最も基本的で重要な最初のステップが「目幅調整」です。
この調整ができていないと、後のピント調整をいくら行ってもクリアな視界は得られません。
目幅調整の目的は、双眼鏡の左右の接眼レンズの間隔を、使用者の両目の瞳の間隔と完全に一致させることです。
目幅調整の方法
調整は非常に簡単です。
まず、遠くにある景色や建物など、何か一つ目標物を決めます。
次に、その目標物を見ながら、双眼鏡の本体を両手で持ち、中央の結合部を支点にしてゆっくりと折り曲げたり、逆に広げたりしてみてください。
これを両目で覗きながら行うと、最初は左右の円が二つに分かれて見えていた視界が、徐々に重なっていくのが分かります。
そして、二つの円が完全に重なり、違和感のないきれいな「一つの円」として見えたところが、あなたにとって最適な目幅の位置です。
一度この調整を行えば、同じ人が使う限りは大きく設定を変える必要はありません。
使用する前には必ず、この目幅調整から始める習慣をつけることが大切です。
各社共通!ビクセンの説明に学ぶピント合わせの基本
目幅を合わせたら、次はいよいよピントを合わせる作業です。
双眼鏡のピント調整は、メーカーによる違いはほとんどなく、基本的な手順は共通しています。
ここでは、多くの取扱説明書で採用されている一般的な方法を、総合光学機器メーカー「ビクセン」の解説を参考に、さらに情報を追加して分かりやすく紹介します。
この手順を踏むことで、左右の視力差を補正し、両目ともにくっきりとした視界を得られます。
この調整の要点は、まず片方の目でピントを合わせ、次にもう片方の目で視度を調整するという、2段階のプロセスにあります。
ピント合わせの基本的な4ステップ
- 目標物を決める
はじめに、ピントを合わせるための目標物を、なるべく遠くにある動かないもの(看板の文字や木の枝など)に決めます。 - 左目のピントを合わせる
右目を手で覆うか閉じるかして、左目だけで双眼鏡を覗きます。そして、双眼鏡の中央にある「ピントリング」を回して、先ほど決めた目標物にピントが合うまで調整してください。 - 右目のピント(視度)を合わせる
次に、今度は左目を覆い、右目だけで同じ目標物を覗きます。このとき、中央のピントリングは絶対に動かさないでください。右側の接眼レンズにある「視度調整リング」だけを回して、右目のピントを合わせます。 - 両目で確認
最後に両目で覗いてみて、目標物が立体的に、かつシャープに見えているかを確認します。これで調整は完了です。
この設定を一度行えば、その後は見る対象との距離が変わっても、中央のピントリングを回すだけで左右同時にピントが合うようになります。
左右の視力差を補正する「視度調整」のコツ
前の項目で解説したピント合わせの中でも、特に重要なのが「視度調整」です。
この視度調整をより正確に行うためのコツと、便利な機能について解説します。
視度調整リングは、多くの場合、右側の接眼部に設置されており、回すことで右目だけのピントを微調整できます。
このリングには、「+(プラス)」「-(マイナス)」「0(ゼロ)」といった目盛りが刻まれていることが一般的です。
一度、ご自身の目にぴったり合う視度の位置が見つかったら、その時の目盛りの位置を覚えておくことをお勧めします。
そうすれば、万が一リングがずれてしまっても、すぐに元の最適な状態に戻すことが可能です。
家族など他の人が使った後でも、自分の設定に素早く復帰できます。
また、一部の双眼鏡には、この視度調整リングに「ロック機能」が搭載されているモデルもあります。

これは、調整後にリングを固定して、意図せず動いてしまうのを防ぐための便利な機能です。
特に、双眼鏡を持ち運んだり、頻繁に使用したりする際には、設定がずれるのを防げるため、非常に役立ちます。
視度調整は一度で完璧に合わせるのが難しい場合もありますので、何度か試してみて、最も違和感なくクリアに見える位置を見つけることが、快適な双眼鏡ライフの鍵となります。
調整してもピントが合わない!見えなくなったのは故障?

これまで説明した目幅調整や視度調整を正しく行っても、
- どうしてもピントが合わない
- 両目で見ると像が二重に見える
- 強い疲労感や不快感を覚える
といった場合は、双眼鏡本体が故障している可能性が考えられます。
特に考えられるのが、内部の光学系にズレが生じる「光軸ズレ」という状態です。
双眼鏡は、左右の筒に入っている複数のレンズやプリズムが精密に配置されることで、正しく機能しています。
しかし、落下などの強い衝撃が加わると、この内部の部品の位置がずれてしまうことがあります。
光軸がずれてしまうと、左右のレンズがそれぞれ違う方向を向いているような状態になり、脳が二つの映像を正常に一つに合成できなくなります。
片目ずつで見ると問題ないのに、両目で見るとひどくぼやける、あるいは物が二つに見えるというのが、光軸ズレの典型的な症状です。
この状態は、残念ながらユーザー自身で修理することはできません。
無理に分解しようとすると、さらに状態を悪化させる可能性があります。
もし光軸ズレが疑われる場合は、購入した販売店やメーカーのお客様相談室に連絡し、修理を依頼することをお勧めします。
まとめ:双眼鏡が両目で見れない悩みを解決する方法
この記事では、双眼鏡が両目で見れない原因と、その解決策について詳しく解説しました。
最後に、快適な視界を取り戻すための重要なチェックポイントをまとめます。
- 両目で見れない原因の多くは故障ではなく設定ミス
- まず最初に確認するのは自分の瞳の間隔に合わせる目幅調整
- 左右の視界が重なりきれいな一つの円になるのが正しい状態
- 片目だけがぼやけるのは左右の視力差が原因
- 視力差は視度調整リングで補正する
- ピント合わせは「左目でピントリング」「右目で視度調整リング」の順
- 一度視度調整をすれば次回からは中央のピントリングだけでOK
- 視野の周りが黒くなる「ケラレ」は目幅やアイカップの調整で解消
- まつげがレンズに当たる場合はアイカップを伸ばして使う
- メガネをかけたまま使う場合はアイカップを必ず縮める
- メガネユーザーはアイレリーフ15mm以上のモデルがおすすめ
- 構える時は脇を締めると手ブレが軽減される
- 正しい手順で調整しても見えない場合は光軸ズレの可能性を疑い修理を検討する